2016年8月20日、Nack5スタジアム大宮にて、第1回目フィールドワークを行いました。今回は実態調査から明らかになったスタジアム内での「オーディエンス・エンゲージメント」(観客のスマートフォンやソーシャルメディアなど多様なメディアとの関わり)について、簡単に述べたいと思います。
モバイル・メディアのエンゲージメントで、最も多かったのは、「試合後、リーグの情報をチェックする」 (87.7%)、次いで試合前に、「サッカーに関する情報を検索する」(78.3%)および「スタジアムの写真を撮る」(77%)でした。さらに、半数近くの人が、「試合後、今日の試合について他人のコメントを Twitter 等で調べる」 (52.5%)、「試合前、買ったもの(グッズや食べ物)の写真を撮る」(47.9%)、「試合中、選手の写真を撮る」(47%)という行動を行っていました。
このようにスタジアム内でモバイル・メディアは、主にリーグやサッカーに関する情報探索や収集と、写真を撮るために利用されていることがわかります。
一方、ソーシャルメディアに関しては、全体の傾向として、「試合後、今日の試合について他人のコメントを Twitter 等で調べる」 (52.5%)のみが半数を超えている以外は、いずれも4割以下であまり多くはありませんでした。
しかしながら、世代に注目してみると、10代の若者たちが他の世代から突出して、すべての質問項目でエンゲージメントが高くなっています。
10代の9割が「試合前、Twitter や Facebook 等の SNS 上に投稿する」(91.7%) 、「試合後、試合の感想を自分の SNS アカウント上でつぶやく」(91.7%) 、「試合後、写真や動画を SNS 上に投稿する」
(91.6%)というエンゲージメントを行っています。また、7割が「試合後、今日の試合について他人のコメントを Twitter 等で調べる」 (71.4%)、さらに半数以上が「ハーフタイム中、写真や動画を SNS 上に投稿する」 (57.1%) 、「試合中、試合の実況や思ったことを SNS 上でつぶやく」 (53.9%) 、「ハーフタイム中、スタジアム外の人とコミュニケーションをとる」(50%)という行動をしていました。
このように若者たちは、全ての時間軸—試合前、試合中、ハーフタイム中、試合後—においてソーシャルメディアを利用し、つながりや発信、共有などのエンゲージメントを行っていることがわかります。
今回の調査結果から見えてくることは、デジタル・ネイティブと言われる若者たち(生まれた時からデジタル・メディアに囲まれている世代)、そしてソーシャルメディアとともに大人になる人びとを魅了し続けるためには、スタジアム内においても、つながりや発信、参加や共有などの社会的欲求を満たすような魅力的なデジタル環境を創ることが必要不可欠なのではないでしょうか?
参考文献
高橋利枝「ICTの利活用による地域の活性化に関する調査研究」NTTグループ委託研究、2017年1月。
高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)