パリのルイ・ヴィトン財団と茨城県の日立駅。この二つは一見全く関係がないように見えますが、現在フランス人アーティストのダニエル・ビュレンによって、幻想的でカラフルな非日常の空間が創られています。2020年東京オリンピックに向けて、テクノロジーと建築とアートのコラボの可能性について考えました。
文化と芸術の街パリ。そのブローニュの森の中にルイ・ヴィトン財団があります。その姿はまるでブローニュの森に浮かぶガラスで作られた繊細で透明な巨大な帆掛船のようです。このデザインを手がけたのは、世界的に有名なアメリカ人建築家のフランク・ゲーリーです。
「絶えず変わりゆく世界のように、その日の時間や光の加減で表情を変える建物を構想したいと考えました。時は一瞬たりとして同じではない、そのはかなさを感じてもらえるように。」(フランク・ゲーリー)
フランク・ゲーリーが意図した「はかなさ」は、ダニエル・ビュレンによって「ワクワク感」に塗り替えられています。隣接する遊園地やルイ・ヴィトン財団で行われている子ども向けイベントに合わせて、まるで道化師のように楽しく子どもたちを迎えています。
一方、日本を代表する建築家の一人、妹島和世による日立駅も、透明なガラスに囲まれ海や空と溶け合いながら美しい姿で人々を魅了しています。しかし自然光を利用した透明感あふれる姿も、現在は茨城県北芸術祭のためダニエル・ビュレンによって虹色のカッティングシートで覆われ、強烈なカラフルな光景が目の前に広がり訪れる人々を驚かせています。
LVMHグループ取締役会長のベルナール・アルノーは、フランク・ゲーリーとコラボしたダニエル・ビュレンの作品を、1970年代に回帰した色彩と透明感と光の融合と評しています。もしカッティングシートの代わりに有機ELや曲面に対応するLEDビジョンなど新しいテクノロジーを用いたら、建築や街をどのような表情に変えることができるのでしょうか?2020年東京オリンピックでは、新しいテクノロジーと建築とアートとの様々なコラボによって、日本を訪れる多くの外国の人々に驚きと感動を与えられることを期待しています。
茨城県北芸術祭 2016年9月17日〜11月20日まで
高橋利枝(メディア・エスノグラファー、早稲田大学文学学術院教授)